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タロット

プレイアデスの7人の娘たちとオリオンのベテルギウス

 17番「星」。二枚重ねの八芒星(クロスした線も入れると三重)のまわりには7つの星がある。八芒星は古来よりコンパスマークと呼ばれ海を象徴する星だ。

(海上保安庁の紋章)

 マルセイユ版の大きな海星にはどういう意味が込められていると考えられるだろうか。他の7つの小さな星よりも大きいということは、空で一番明るく輝く星だとか、人々の間でなにか重要な意味づけがされている星であるとか、宇宙で一番大きな星だとか、他の小さな星よりなにか抜きん出た特徴がある星だとか色々考えられる。

 空で一番明るい星はシリウスだ。Wikipediaによると「太陽を除けば地球上から見える最も明るい恒星でマイナス1.46等星」だという。しかし、シリウス以外にも候補の星は考えられる。大きな星のまわりに7つの小さな星も描かれている。7つの星で有名なのはたとえば北斗七星で、これは北極星を見つけるときの目印になる。ひしゃくの頭を5倍のばしたところにあるのが北極星というように覚えれば、バンザイ、これでコンパスがなくても夜空の星から北極星をみつけ北の方位を特定できるぞ。

https://www.tamarokuto.or.jp/blog/rokuto-report/2020/05/03/northern-sky01/

 だから17番の大きなコンパスマークの星はシリウスだけではなく北極星を表している(かもしれない)とも解釈できる。また、一番明るい星という意味では金星もそうで、星のカードに描かれている裸の女性も金星のシンボルだし、残りの水星、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星も入れて8惑星を当てはめるのもありだと思うが、土星以遠の外惑星(冥王星は惑星認定から脱落したが)は肉眼では見えないので、いまひとつエレガントさに欠ける。だいたい金星は惑星であって恒星ではないが、うーん、まあいいか。

 さて、ここまでは「タロットの謎」に書いたことだけど、ほかにも「7つの星」というとプレアデス星団がある。ギリシア神話によるとティターン族のアトラースと海のニュンペー(下級女神・精霊)のプレーイオネーとの間にできた7人娘たちのことをプレイアデス(Pleiades/プレアデス)と呼ぶ。後にティターン族が戦争でゼウスたちに敗れ、そのときアトラースは天を背負う苦役を与えられる。怖い父親がいなくなったせいだろうか。オーリーオーンがプレイアデス姉妹全員を追いかけ回すようになった。ゼウスは彼女らを初めはハトに、ついでその父を慰められるようプレイアデスを星に変えた。オリオン座はいまだプレイアデス星団を追って夜空を回っているという。( Wikipedia「プレイアデス」)

 星のカードの7つ星がプレイアデスの姉妹たちだとすると、中央の大きな星はプレイアデスの神話からするとオリオンと考えることもできる。ただし、オリオンという星座はあってもオリオンという恒星は存在しない。そこで、オリオン座の主星、つまりα星に目をつけよう。

それはベテルギウス。大きく明るい星。変光星で周期的に明るさを変える。何年かごとに、明るくなったり暗くなったり不安定で、近いうちに超新星爆発を起こすとよく言われるが、星の寿命は人の寿命とくらべて桁外れに長いので、その時は明日かもしれないし十万年後かもしれないというように地震よりずっとあてにならない。

 ベテルギウスの見かけの明るさは0.0 – 1.3等級の範囲で変化する。最も明るくなる極大期にはリゲルやカペラよりも明るくなり、全天で6番目に明るい恒星になる期間もある。最も暗くなる極小期ではデネブやみなみじゅうじ座β星よりも暗くなり全天で20番目の明るさにまで後退する。

 ベテルギウスが放出している放射エネルギーのうち、可視光線として放射されてるのは全体の約13%だが、近赤外線(目には見えない光)を大量に放射している。(コタツの赤いランプのような星だ)。人間が肉眼で全ての波長の光を認識できたとしたら、ベテルギウスはマイナス2.99等星と換算され、全天で最も明るい恒星ということにる。(参考文献 Wikipedia「ベテルギウス」)。星のカードの大きな星をベテルギウスと見立てたときも、条件次第では一番明るい恒星ということになる。

 また、ベテルギウスは10万年以内には超新星爆発を起こすと言われている。そのときは昼間でも見えるものすごく明るい星となって数ヶ月にわたって輝きつづけるとされている。つまり、星のカードの大きな星は超新星爆発をおこしているベテルギウスだったんだよ

オリオン座の星「ベテルギウス」の最期

シリウスはイシスでありイシスは代表的には農耕の女神だが、プレイアデスも農耕に深い関係があるとされる。

 

日本でも蕎麦を栽培する時期を決める目印にされてきた。

https://www.eonet.ne.jp/~sobakiri/frame-4/hu-preadesu.html

 マルセイユ版の星のカードだと大きな星の周囲に7つの星があり、それはこれまで見てきたように、シリウスや北極星や金星やベテルギウスといった夜空で無視できないメジャーや星々をうまく象徴している。

 しかし、星の数がタロットの種類によって異なることはよくある。その数を問題にするなら、そこにどんなイメージを投影できるのかについて語ってほしいと思う。たとえば小さな星が3つとか5つとかなら、そこから導出される恒星やそれにまつわる神話はどのように変化するのだろう。7つの場合に比べてどのように解釈がかわるのだろう。また、リアルな夜空を表現してたくさんの星がちりばめられたカードなら、どんな意味が導出できるのだろう。

 私個人の意見としては、大きな星の周囲に7つの星というのがイメージが膨らみやすく、つまりそれだけ絵に込められている情報量が多いと思うのだがどうかしら。