幽体離脱とバーチャルリアリティ

記憶は脳も含め肉体に保持されているとして、もし幽体離脱で行く世界がその記憶の再生によって触知されているとしたら、気が遠くなるほどの情報量があるに違いありません。幽体離脱したとき自分の部屋の畳の目を一本一本数える事すらできますし、実際の部屋の中にいるのと同程度の精密さがその空間にはあるからです。それは完全な立体情報をもっています。だからこそ空を飛んで町の景色を鳥瞰図的な視点で見る事ができるのです。もし絵のような平面的な記憶しかないなら、空を飛んで建物を上空からながめるなどという事はできないと思われます。脳(あるいは肉体)は肉体感覚で捉えた外界の情報を立体情報として、しかもかなり精密に記憶しているらしいとはいえそうです。

コンピュータによるバーチャルリアリティは、五感の再現性という意味では、まだまだお粗末なものです。視界を表現するポリゴンの3D画像はゲームには使えても、実物と見間違うほどのクオリティはありません。しかしこんな未発達なVRでも、それを実現するには膨大なデータ量とそれを処理する高性能のプロセッサが必要です。

視覚だけを取り上げて説明すると、人は外界の視覚情報を目から受け取っています。片方の目だけだと遠近感が分からなくなります。つまり眼球一つで得られる視覚情報は平面情報しか得られない。二つになれば両眼からの入力の差(視差)から、遠近感を脳が割り出して立体的な視覚として認識できるようになります。
VRでは視覚的なデータは、X,Y,Zという直角座標として格納されています。つまり幅、高さ、奥行きをもつ点の集合として立体物のデータを保管し、その物体をこの位置から見たときはこのように目に映るという計算を瞬時に行って、立体映像を作るのです。
コンピュータで擬似的に作った視覚信号を脳に送り込む事がもし可能だとしたら、そこに実際の空間など無いにもかかわらず、あたかもそれがあるかのように錯覚するでしょう。がしかし、これはSFのようなもの。できるように思えても、実は不可能な事かもしれません。

さてそこまで高度な技術が確立したとして、被験者を現実と錯覚するほどよくできた別世界に送り込むためには、その別世界のデータを用意しなければなりません。幽体離脱したとき自分が住んでいる部屋やさらには町が、それはそれはリアルに再現されるし、見て触れる事もできるし、動き回る事もできるわけです。ドアを開けたらその向こうは空っぽで、実は映画のセットのようなハリボテだったなどということは無いのです。どこまでも忠実に再現されます。地面を掘ればちゃんと土が掘られる様子が見えます。ものを壊せば、ちゃんと壊れます。人や動物もいて動いていて、会話することもできます。バーチャル世界を歩き回るコンピュータゲームは所詮おもちゃです。幽体離脱で入り込む世界の精密さには遠く及ばず、そうなるためにはまだまだ長い時間がかかるでしょう。こういう事をVRで実現するには、ゲームの何千倍(何万倍?)という情報量が必要になると思います。

人の脳細胞の数は約140億個などと言われます。脳がどのようにして記憶を保持しているのか分からないし、はたして細胞に記憶が蓄えられているのかもわかりません。もしかしたら細胞の中にはコイルのようなアンテナが入っていて、分散型データベースのように多人数で記憶を共有しているのかもしれないし、未知の別空間に蓄えられている記憶庫と無線でつながっているのかもしれません(笑)。それは冗談ですが、もし細胞に記憶が蓄えられているとして、細胞一個にどれほどの情報が記録できるのかも謎です。無意味な比喩ですが、コンピュータの記憶単位、バイト(1byteで0〜255までの数値を記憶可能)で換算し、140億バイトというと、たかだか13ギガバイト。家庭用パソコンのハードディスクなみです。このサイズでは到底、幽体離脱なみのVRは再現できないのは明白です。脳が記憶を持っており、幽体離脱ではその記憶の世界に行くのだとすると、おそらく脳の記憶細胞一つ一つは、それ単体でものすごく多量の記憶を保持できるのでないと、話が合わないと思われます。

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